回避可能費用

話しを元に戻します。

一部の新電力等において、小売契約を前提とせず、買い取った電源をそのまま取引所で売却している。その場合、 転売益が小売電気事業者に残り、需要家に還元されず、国民負担の増加につながる。したがって、激変緩和措置を設ける場合でも、国民の負担の増加につながらないよう、不当な裁定取引への対応が必要ではないか。
と、ディスカッションメモにも記載されています。

対応が必要というよりも、制度を変更する必要があるのは当然のことでしょう。
発電事業者から買ってきたものを市場で転売しただけで税金を用いて巨万の富を得ることができることは防がなくてはなりません。

根本的な矛盾点として、

『 固定価格買取制度は回避可能費用が低いほど交付される交付金が増えるため、再生可能エネルギー 電気の価値を下げる方向にインセンティブが働くことになっており、おかしい』
のです。

結果として、回避可能費用として市場価格指標を用いることで落ち着いていきます。
市場価格市場の細かいところは、スポット市場と1時間前市場の加重平均(30分値をそのまま用いる)、スマートメーターによる30分値が利用できない場合は、プロファイリングで対応などの案が出ていますが、要するに市場価格を用いるということです。

当然のことですよね。

実際に調整に使われるのは発電単価が高い火力になる傾向があるのは事前に明らかであったのですから、回避可能費用は全電源の平均ではなく、市場価格にしておけば済んだはずです。
何故、全電力平均になったのでしょうか?誰が損をして誰が得をしたのでしょうか?
変更や、対応ではなく、改善ですね。

一般電気事業者が支出を免れた平均費用ベース

『現在、再生可能エネルギーの買取りに伴って一般電気事業者が支出を免れた平均費用ベースというものを中心的な価格として考えておりまして、仮に卸電力市場の取引価格がこれより高い場合は、確 かに買い取った再エネ電気を市場で転売することで利益が上げられるという構造になっているということは事実でございます。』とあります。

 

 

議員が指摘している市場とは、「卸電力市場」を意味しています。

では、卸電力市場の価格の方がなぜ、「買い取った再エネ電気」よりも高いのでしょうか?

常識的に考えて、

「一般電気事業者が支出を免れた平均費用ベースというものを中心的な価格」の決定方法に課題があることがわかります。

 

では、一般電気事業者が支出を免れた平均費用ベースとは何を意味するのでしょうか?

 

だんだんと複雑な話になってきています。制度としてもっとシンプルに誰もがわかりやすくしたほうが良いのでしょう。

例えば、再生可能エネルギー賦課金は、再エネ買取費用+事務経費−回避可能費用で決められますが、事務経費の透明性は利用者にとってはわかりづらいものですし、金額が総量から考えると軽微なので、税金で賄ってしまっても良いのではないでしょうか?

再生可能エネルギー賦課金=再エネ買取費用−回避可能費用とした上で、

再エネ買取費用の決め方と、回避可能費用が公平で分かりやすい仕組みにして、複雑な部分は第三者検証機関が確認を行うようにしても良いのではないでしょうか?

 

賦課金・回避可能費用

回避可能費用の算定方法の見直しについてとの題目で平成27年5月18日付で 資源エネルギー庁がディスカッションメモを公表しています。

http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/kaitoriseido_wg/pdf/006_01_00.pdf

この中で、次のような環境委員会でのやり取りが記載されています。

【参考】市場転売に関する参・環境委員会での審議(抜粋)(2015年4月7日)

○清水貴之議員(維新) 四月一日の日本経済新聞に出ていた記事で、転売をしている業者の話なんですけれども、電力小売が企業に売るよ

り市場価格の方が高いですから、直接企業に売るんじゃなくて一旦市場の方に流してしまうと、大体十円前後で売って いるものが十五円とか二十円とかで売れるから、その分の差益というのが利益になっていると。大体一億円を超える利 益を得たケースがあると。その買って売る差の分というのは、政府からの補助金が大体二十円出ているということです から、言ったら国民のお金が入っているわけですね。それを本当は小売にしなきゃいけないのに、市場の方が高いから と流してしまって利益を得ている。だったら、国民負担をもっと減らせばいいわけですから、こういうところも、額にしたら それほど、でも一億円出たら大きいですよね。大きな額になっていますので、この辺りもしっかり見ていっていただきたい。

こういう、不正とまでは言えないのかもしれませんが、ある意味抜け道的なところ、国民負担を減らすための少しでも 努力をしていただきたいと思うんですが、まずはこの現状についてどう把握していらっしゃって、どう対策取っていくつも りか、お聞かせいただけますでしょうか。

○政府参考人(木村陽一省エネルギー・新エネルギー部長) 御指摘について申し上げますと、現在、再生可能エネルギーの買取りに伴って一般電気事業者が支出を免れた平均費用ベースというものを中心的な価格として考えておりまして、仮に卸電力市場の取引価格がこれより高い場合は、確 かに買い取った再エネ電気を市場で転売することで利益が上げられるという構造になっているということは事実でござ

います。現在、国民負担によって御指摘のとおり支えられている制度でございますので、こうした状況を見直すべく、回 避可能費用につきましては卸電力市場価格に連動する方式に今見直しを進めているところでございます。

仮にこの方式にしますと、市場に転売しても利益が発生することはございませんので、引き続き問題意識を持って検 討を進めてまいりたいと考えてございます。

○清水貴之議員

ということは、やはり今市場で売って利益を得ている業者がいるというのは問題であるという認識を持っていらっしゃる ということでよろしいですかね。

○政府参考人(木村陽一部長) その点については、そのような認識で私どもとしても考えてございます。

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この議論の意味はお分かりになりますでしょうか?

国民が負担している賦課金を使って裁定取引を行っていることを指摘しています。

 

ちょっと内容が複雑になってきましたが、賦課金・回避可能費用の核心に触れてくることなので、さらに深掘りしてまいります。

賦課金とは

賦課金とは誰のためのものでしょうか?

そしてそもそも何が目的なのでしょうか?

経済産業省資源エネルギー庁のHPには次のように記載されています。

『固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーが私たちの暮らしを支えるエネルギーの一つになることを目指し、電気をご利用の皆様に再生可能エネルギー賦課金のご負担をお願いする制度でもあります。』

その理由としては、

『再生可能エネルギーは一度発電設備を設置すると自然の力で繰り返し発電が可能です。再生可能エネルギーの電気が普及すれば、日本のエネルギー自給率の向上に有効です。エネルギー自給率が向上すると、化石燃料への依存度の低下につながり、燃料価格の乱高下に伴う電気料金の変動を抑えるといった観点から、すべての電気をご利用の皆様にメリットがあるものだと考えています。

また、本制度によって買い取られた再生可能エネルギーの電気は、皆様に電気の一部として供給されているため、電気料金の一部として再エネ賦課金をお支払いいただくこととしております。

(なお、再エネ賦課金単価の算定の際、買取りに要した費用から、電気事業者が電力を買い取ることにより節約できた燃料費等は差し引いております。)』

とあります。

すでに法制化されているものですので、支払いの義務が発生しています。

では誰のために支払っているのでしょうか?

 

『電気を使うすべての方にご負担いただくものです。

電気料金の一部となっています。

ご負担額は電気の使用量に比例します。

再エネ賦課金の単価は、全国一律の単価になるよう調整を行います。

皆様から集めた再エネ賦課金は、電気事業者が買取制度で電気を買い取るための費用に回され、最終的には再生可能エネルギーで電気をつくっている方に届きます。』

とあります。

端的に言うと、賦課金とは再生可能エネルギーを発電事業者から電気事業者が買うための資金に使うということです。

電力会社が購入して、それを利用者にある意味で「転売」している構図です。しかし、それにはお金を利用者が追加で払わなくてはならない。という仕組みです。

 

ここでやはり明確にしなくてはならないのは、回避可能費用と、事務経費だと思われます。回避可能費用が低く見積もられてしまっては賦課金は大きくなります。事務経費が高額になれば賦課金は大きくなります。

(再生可能エネルギー賦課金=再エネ買取費用+事務経費−回避可能費用)

今後、この回避可能費用と事務経費について記載していきますね。